「初心忘れるべからず」 池上彰先生のコラムから2014年09月15日

 池上彰先生とは東工大の同僚です、といっても池上さんとは面識もありませんが。日経新聞の「池上彰の大岡山通信」連載は私も熱心な読者の一人です。
東工大では、私が学生のころから教養の教授にその時代の大家や有名人がおられ、技術バカになりがちな東工大生に幅広い視野を与えておられます。私のころは、作家の江藤淳や、政治学者の永井陽之助の講義を聴くことができました。余談ですが東工大大学院進学では学部時代の成績が上位だと推薦が受けられたのですが、私の場合江藤教授から4単位いただくなど、人文社会系の科目が目立ち、推薦を決める教授会では、成績は基準に達していたものの、その点が議論になったと合格後に指導教授にお聞きしました。教授会のご判断に感謝いたします。
 さて今朝の池上先生のコラムは「初心忘れるべからず」と題して、今回の朝日新聞とのやりとりを踏まえ、NHKの駆け出しの記者のころに研修で聞いた「お前たちは、国民の知る権利に奉仕するための仕事をするのだ。その仕事を負託されているから、一般市民よりは現場に近づける。だから、何が起きているのかを早く正確にわかりやすく国民に伝える義務と責任がある」という言葉を、いまも忘れることはできません、として、新聞記者の初心を持ち続けたことを伝え、初心を忘れた朝日新聞を厳しく指弾しています。
 さらに、「仕事上の理想は、それぞれの職場であるはずです。」として、その一例で「キャリア官僚になった人は、「国民のため、国家のために奉仕したい」という理想に燃えていたはずです。ところが、いつしか自分が所属する省庁の利益のために動いている。国益ならぬ省益のために汗を流す。こんなことが起きます。」と断じておられます。
 この指摘は、私も現役時代、ずっと感じてきたことと重なります。そしてある日、大学連携の室長、課長となった時、「産学連携を通じた大学改革こそ国益であり、そのために汗を流すことができて幸せだ」と感じました。もちろんそれまでの様々な政策現場での汗も国益のために流してきたと自負していましたが、大学人を相手にした仕事は何かこれまでと違うすがすがしさを感じたのです。これはとてもラッキーなことだったと思っています。その後は、いろいろな職場にいても、目の前の業務に取り組みつつ、常に大学のことを意識し、大学をよくすることこそが日本をよくするのだと確信して仕事を進めて来ました。
 中央省庁の仕事は、どれをとっても国益に通ずることは間違いないと思います。しかし、政策は利害調整の上に成り立っており、現場では難しい判断を行うときも来ます。その時、官僚の皆が持っているであろう「国家に奉仕したい」との初心を忘れなければ、後で後悔する決断を避けることができるかもしれません。現役の皆さん、初心を忘れず頑張りましょう。